ずっと読みたかった太宰治氏の娘さん、津島佑子さんの短編集!
数年前、大学入試センター試験に出題された『水辺』も収められています。
この短編集は、短編の連作という形が取られています。
つまり、短編集なんですが、1冊通して主人公は同じです。
だんなさんとの別居が決まった女性が、一人娘とともに新しい生活を
はじめるところから、このお話はスタートします。
「どうようもない」というか、「救いようが無い」という空気を
持つ作品だな、と感じました。何か大きな事件が起きるわけではないんですが、
母親と子供の日常を、とても丁寧に描写していくなかでストーリーを魅せていく
というテクニック。
世間が理想としている母親像とは離れた女性が
それでもなんとか日々を過ごしていきます。
子供は少しずつ成長し、母親との折り合いが悪くなったりもします。
ふととなりの路地を見れば、実在しそうなくらい、
現実感のある母子の生活が描かれていました。
裏表紙に、この作品を形容して“融け出すような不安”という言葉が
ありましたが、まさにその通り。
どろっとして、感情と感情の隙間からすーっと出てくるような不安。
それに母子が泣いたり怒ったりする。
それが正しいとか正しくないとかじゃなくて、
動かしようの無い彼女たちの「現実」なんだろうなと感じました。
よくある親子の物語のように、
すべてが完全な円を描いていかない。
そんなところが逆にリアルで、私は好きでした。
この作品は1984年に発表されたもので、
だいぶ古いので入手は難しいかもしれませんが、
図書館にはあるとおもいます。
なんといっても津島佑子さんなので…。
是非読んでみてください。