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カテゴリ:小説
  • 「号泣する準備はできていた」/江國香織
    [ 2005-06-26 22:58 ]
  • 「光の領分」/津島佑子
    [ 2005-05-01 00:00 ]
  • 「うつくしい子ども」/石田衣良
    [ 2005-04-01 00:00 ]

「号泣する準備はできていた」/江國香織
 久々の本棚更新です。

 今回は、江国香織さんが直木賞を受賞なさった作品、
 「号泣する準備はできていた」の感想文を書こうと思います。

 私は江國香織さんの作品が好きで、結構読んでいます。
 最近は、「東京タワー」が映画化されて話題になりましたよね。
 私がいちばん好きなのは、「ホリー・ガーデン」という
 もしかしたらちょっとマイナーな作品ですが、
 その話は置くとして。

 江國香織作品には、彼女にしか書けない空気が
 やどっているように思います。
 そしてもちろん、この本もそうでした。
 この本は短編集になっています。
 あとがきで江國さんご本人がおっしゃったように、
 ドロップの缶のような本でした。
 1つ1つ独立していて、全然違うんだけど、
 でも持っている空気は大体一緒、という感じがしました。

 女性同士のカップルの話や、
 義理のお母様と旅行に行く女性の話、
 ホストファミリーとなる話、
 親友夫妻の前でする夫婦喧嘩、
 離婚を決めていながら
 それを隠して相手の家族に会いに行く夫婦、など。
 日常のどこにでも転がっていそうな、
 淡々とした設定だけど、どこか日が陰っているような。
 ほんとに普通なんだよね、と思います。
 でも、江國さんの手にかかると、
 なぜか詩的に見えてくるから不思議。

 あたしもう泣く!っていう瞬間って、あると思うんです。
 糸を張りつめたみたいな、ぎりぎりの感覚。
 そうだからってとても悲しいんじゃないんだけど、
 でも泣き出してしまいそうっていう状態。
 その瞬間をうまく捉えて、
 お話にしていったら、こうなるのかしら。
 そんな本でした。 

 江國作品はどれも読みやすく、はずれがないと思うので、
 読んだことのない方は、手にとってみると面白いかもしれません。
 この本のような短編集は、気軽に読めてよいですしね。
by natsume100cc | 2005-06-26 22:58 | 小説

「光の領分」/津島佑子
 ずっと読みたかった太宰治氏の娘さん、津島佑子さんの短編集!
 数年前、大学入試センター試験に出題された『水辺』も収められています。

 この短編集は、短編の連作という形が取られています。
 つまり、短編集なんですが、1冊通して主人公は同じです。
 だんなさんとの別居が決まった女性が、一人娘とともに新しい生活を
 はじめるところから、このお話はスタートします。
 
 「どうようもない」というか、「救いようが無い」という空気を
 持つ作品だな、と感じました。何か大きな事件が起きるわけではないんですが、
 母親と子供の日常を、とても丁寧に描写していくなかでストーリーを魅せていく
 というテクニック。
 世間が理想としている母親像とは離れた女性が
 それでもなんとか日々を過ごしていきます。
 子供は少しずつ成長し、母親との折り合いが悪くなったりもします。
 ふととなりの路地を見れば、実在しそうなくらい、
 現実感のある母子の生活が描かれていました。

 裏表紙に、この作品を形容して“融け出すような不安”という言葉が
 ありましたが、まさにその通り。
 どろっとして、感情と感情の隙間からすーっと出てくるような不安。
 それに母子が泣いたり怒ったりする。
 それが正しいとか正しくないとかじゃなくて、
 動かしようの無い彼女たちの「現実」なんだろうなと感じました。
 
 よくある親子の物語のように、
 すべてが完全な円を描いていかない。
 そんなところが逆にリアルで、私は好きでした。

 この作品は1984年に発表されたもので、
 だいぶ古いので入手は難しいかもしれませんが、
 図書館にはあるとおもいます。
 なんといっても津島佑子さんなので…。

 是非読んでみてください。
by natsume100cc | 2005-05-01 00:00 | 小説

「うつくしい子ども」/石田衣良
この本の作者の石田衣良さんは、
「池袋ウエストゲートパーク」を書かれた方です。
2003年には、「4TEEN」で直木賞を受賞なさっています。

さて。
この「うつくしい子ども」という作品の特徴のひとつは、
ミステリーのような形を取っておきながら、
本についている帯に、犯人が誰かが書いてあるという点にあります。
実際、この作品のなかでは猟奇殺人がおき、
事件の真相を解き明かしていくということが
物語の重要な軸になっています。
こういう場合、犯人は読んでみてのお楽しみ、というか、
犯人探しを含めて物語を楽しむ構成になっていることが
多いのではないでしょうか。
書店でお手にとっていただければわかることですが、
犯人は主人公の弟です。

この作品では、主体的に語る人物が2人います。
ひとりの主人公は、植物が大好きな少年。
フィールドワークも得意で、その能力を認められて、
有名中学に入学できたほどです。
そしてもうひとり、忘れてはならない主人公は、新聞記者の男性。
まだ入社してそれほど経っていない、新米の部類に入る記者です。

こうして視線や思考を違う方面からむけることで、
事件の全貌がよりわかりやすく、現実的に描き出されています。

ラストは、思いがけない事実の判明とともに描かれます。
え、そんなことってあるの?みたいな驚きがありました。
権力(マスメディア)対被害者・加害者という視点も
きちんと織り交ぜられたラストは圧巻です。

全体の印象としては、読みやすくてわかりやすい文体でした。
内容は決して明るくはないけれど、ラストまでの展開が
鮮やかで、私としては好きな作品でした。
by natsume100cc | 2005-04-01 00:00 | 小説


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by natsume100cc
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